酸素貯蔵材料は,酸素分圧や温度を制御することにより可逆的に固体内の酸化物イオンを出し入れできる材料です.そのため,その用途としては,自動車触媒・酸素分離膜・酸素センサー・固体電解質など多岐にわたっています.その中でも,自動車触媒の助触媒として利用されている CeO2-ZrO2固溶体は最も有名であり,本材料は排ガス中の酸素濃度に応じて,可逆的に固体内酸素を吸蔵・放出し,貴金属から成る主触媒の表面酸素濃度を,微調整しています.この機能により,走行モードによって酸素濃度が変動する排ガス中の有害成分を効率良く浄化することができます.我々は,結晶構造の基本骨格を維持した相転移現象であるトポタクティック転移に着目した材料設計を進めており,Sr-Fe系複合酸化物が高い酸素貯蔵能を有していることを見出しています.さらに,固体内部のトポタクティックな酸化還元機構を利用した新規触媒材料への展開も検討しています.